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女子大生は樹海がお好き?

 3月26日から行方不明になっていた静岡県磐田市市長の長女が、山梨県の富士山麓にある青木ヶ原樹海の入口で発見された。行方不明の女子大生が樹海で発見……というニュースを聞いたとき、ふと思い出したのが、一昨年の夏、やはり樹海で発見された女子大生のこと。あのときも何者かに拉致されたのではないかと公開捜査されていた女子大生が、実は自殺するために樹海に行き、ナイフで手首を切ったりしたが死にきれなかったということで、事件性はナシと判断されたためか、以後、報道も途絶えることになった。

 発見された場所は、今回が富岳風穴入口で、前回は富岳風穴からも近い県道「鳴沢~富士宮線」の脇だった(この道は、郷里に帰るとき、国道139号線の抜け道として利用していたが、深夜にクルマで走ると、樹海の中の一本道で、実に不気味。ただし交通量が少ないため、時間を短縮できる)。

 樹海が自殺の名所になったのは、松本清張のベストセラー小説『波の塔』が理由だとされている。『波の塔』は1959年から60年にかけて「週刊女性自身」に連載された社会派不倫ラブロマンス小説(?)で、同年にはカッパノベルスから出版され、映画にもなった。ぼくはリアルタイムで、この映画を見ているが、深夜のテレビで再鑑賞するまで、ストーリーはまるで覚えていなかった。最初に見たのは小学4年生くらいだったはずだから、そもそも内容が理解できなかったのだろう。でも、ヒロインが樹海に消えていくシーンだけは、なぜかよく覚えている。

 その後、昼メロになったり(たしか、加賀まりこがヒロインを演じていた)、たびたびテレビドラマ化されているが、いまの女子大生が『波の塔』を読んだり、映画を見て影響を受け、樹海をめざしたとは思えない。それよりもオカルティックなテレビのスペシャル番組などの影響を受けているのではなかろうか。富士の樹海が、さも神秘的で霊的な場所であるかのように伝えるテレビ番組が多いからだ。

 ぼくの腹違いの兄が、樹海で自殺した知人の身元確認に呼ばれて出かけたことがある。すでに骨だけになっていて、手首の骨に巻きついていた外国製の腕時計で本人だと確認したそうだが(他の方法でも調べただろうが)、「あんなとこで死ぬもんじゃない」と兄は話していた。遺体が動物に食い散らかされたらしく、骨がバラバラになっていたという。人間の死体が野良犬に食いちぎられるシーンを想像したら、確かに、そんなところで死にたくはなくなるだろう。樹海での自殺など、少しもロマンチックではないということだ。もっとも、地に還るのが目的で樹海に入るエコロジストの自殺志願者なら話は別になるが……。

 追記:今回の市長令嬢、樹海で発見のニュースを聞いて、佐々木譲氏も一昨年の事件のことを思い出したらしい。2つの事件に何か共通性があるのでは……と考えるのは、やはり小説家の業のようなものかも。前回、今回の事件は、事前に公開捜査となった事例だったため、世間の耳目を集めることになったが、最初から、家出人、失踪人扱いのケースで、樹海に入ったものの死にきれずに出てくる例は、かなり多いそうです。今回の事件の発見現場となった富岳風穴あたりは、そんな死にきれなかった人が出てくる場所としても知られています。

 そういえば、今回の件のニュースには、富岳風穴の場所として富士河口湖町という町名が登場した。河口湖町なら知っているけど富士河口湖町なんて知らないぞ……と思っていたら、昨年の11月に周囲の村と合併して、この町名に変更されたのだそうな。


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